岸田文雄首相は、2023年5月1日(日本時間2日未明)、西アフリカにのガーナの首都アクラでアクフォアド大統領と会談し、地域の平和と安定化に向けて3年間で約5億ドル(約688億円※)の支援を行うと表明したことが多くのメディアが報道されています。
読売新聞オンライン | 日ガーナ首脳会談、非常任理事国同士で安保理改革へ連携「アフリカの声G7へ」 |
日本経済新聞 | 日本・ガーナ首脳「透明な開発金融を」 中国の行動念頭 |
朝日新聞デジタル | 岸田首相、サハラ南部に5億ドルの支援表明 ガーナで大統領と会談 |
そこで、本記事では、「なぜ日本がアフリカに3年間で5億ドル支援するのか?」目的と理由を考察。ニュースを深掘りしています。
日本の総理として17年ぶりのガーナ訪問 首脳会談
上記動画では、
重要なパートナーであるガーナとの関係を一層高みに上げていくことで一致を致しました。
と岸田総理が発言。
会談の様子、日本の支援で設立された「野口記念医学研究所」を視察する様子が紹介されています。
ANN NEWSは、日本の総理としてガーナを訪問したのは、小泉総理以来17年ぶりで国連安保理の改革の必要性で一致、保健分野での協力強化をアピールしたと報道しています。
日本はなぜアフリカに3年間で5億ドル支援する?
両首脳は、透明で公正な開発金融の重要性で一致した。
と多くのメディアが報道しています。
「具体的にどんな支援か?」
サハラ砂漠南部のサヘル地域やガーナを含むギニア湾沿岸諸国の平和と安定のため、今後3年間で約5億ドル(約680億円)を支援すると表明した。アクフォアド大統領は「現在の安保理は第2次大戦の勝利国がメンバー(の中心)で今日的な現実を反映していない。改革を進めなくてはならない」と述べた。
と朝日デジタル新聞は報道しています。
これによると
サヘル地域やガーナを含むギニア湾沿岸諸国の平和と安定が5億ドル支援の目的と言えるでしょう。
ただし、具体的な使い道については言及されていません。
安全保障理事会の改革に関しては、非常に困難だと言われています。なぜなら、安全保障理事会の 5 つの常任理事国は拒否権を持っており、その権限を低下させる変更に同意する可能性は低からです。
サヘル地域
サヘル地域は、アフリカのサハラ砂漠の南側に広がるニジェール、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア等。
ギニア湾沿岸諸国
- リベリア
- コートジボワール
- ガーナ
- トーゴ
- ベナン
- ナイジェリア
- カメルーン
- 赤道ギニア
- ガボン
- サントメ・プリンシペ
- コンゴ共和国
- コンゴ民主共和国
- アンゴラ
なぜガーナと会談したのか?
「日本国内で物価高騰、少子高齢化で社会保険料が上がる中、アフリカに巨額の資金を支援するのはなぜ?」と不満を感じている方もいるようです。
「なぜ岸田首相はガーナの大統領と会談したのか?」
一言で言うと、アフリカで数少ない民主主義を掲げるガーナと友好関係を築くことが重要だという考えがあったと言われています。
1.独裁体制国家に対する牽制
先進国だけで解決することが難しい世界的な問題に対して対処していくには、グローバルで協力する必要があります。しかし、アフリカは政治的に安定している国家は少なく、完全な独裁体制国家も少なくありません。
ガーナは近年、比較的平和な国ですが、いまだに紛争地域がいくつかあります。 特に首長紛争が問題となっています。 誰が町の首長を支配すべきかをめぐって、部族間で対立が起きていると言われています。
ガーナ政府はこれらの紛争の解決に取り組んでいますが、それは時間のかかる困難なプロセスです。 政府はまた、貧困、失業、教育の欠如など、紛争の根本的な原因に対処するために取り組んでいます。
日本が金銭的な支援を行うことは、これらの問題の解決に繋がる可能性があります。民主主義国家が平和を実現すれば、独裁国家に対しての牽制となるでしょう。
2.アフリカ支援に注力する中国に対抗
支援する理由は、地域の平和と安定化と報じられていますが、それだけではありません。
中国の過剰融資で返済が行き詰まり、支配が強められる「債務のわな」も指摘されています。
債務のわなとは、国際援助を受けた国が債権国から政策や外交などで圧力を受ける事態に陥ることです。途上国を借金漬けにすることから借金漬け外交とも表現されます。
つまり、これらの潜在的なリスクに対してアフリカを支援し、長期的な友好関係を築くという目的があったと考えられます。
3.資源を輸入に依存
森永製菓の記事によると、カカオの樹の生育条件は
- 平均気温27度以上
- 年間を通じて気温の上下幅が狭い
- 日照時間の平均が1日5時間から7時間
- 降雨量は年間2,000mm以上の高温多湿
- 土壌や土質(ローム層系の粘土質40%以下の水はけの良いところ)
とかなり限定されているため、日本でカカオ豆を育てるのは困難です。
ガーナとの友好関係を築くことができなければ、カカオ豆の輸入価格が高騰する可能性があります。
ガーナはどんな国?
外務省の資料には
ガーナ経済は農業・鉱業等に依存する典型的な一次産品依存型であり、主要輸出品も金、石油、カカオ豆が上位を占めており、国際市況及び天候の影響を受けやすい。主要産業の農業は国内総生産(GDP)の約20%、雇用の約半数を占める。
と記載されています。
日本とガーナの関係
日本とガーナの関係は、100年近く続いています。
野口英世がガーナに赴き黄熱病の研究をしていた
日本とガーナが初めて接触したのは1927年であり、日本人医師である野口英世がガーナ(当時イギリス領ゴールドコースト)に赴き黄熱病の研究をしたことに始まると言われています。 ※1
カカオ豆のほとんどをガーナから輸入している
日本はチョコレートの原料となるカカオ豆のほとんどを、ガーナ共和国から輸入しています。
日本は年間3~5万tのカカオ豆を発酵カカオ豆の形態で輸入しているが、その8割はガーナから
と公益財団法人国際緑化推進センターの記事に記載があります。
外務大臣、大統領の訪日
2019年ガーナ大統領ナナ・アクフォ=アドがアフリカ開発会議出席のために訪日を実施。
安倍総理大臣はアクフォ=アド大統領が主導する「援助を超えたガーナ(Ghana beyond Aid)」構想を後押しするためJETRO事務所の設立やガーナ・日ビジネス促進協議会の設置を通じて、両国の貿易投資関係を強化したい述べました。
※2023年5月2日投稿
ニュース
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参照外部リンク
借金漬け外交 – Wikipedia
日本とガーナの関係 – Wikipedia
カカオ豆のビジネスモデルの概要 | 途上国森林ビジネスデータベース BFPRO
ガーナ基礎データ|外務省