「考え方は人それぞれ」という言葉はごく当たり前のことであるため、それを口に出すことに対して違和感を感じている方もいるようです。
しかし、他者と円滑なコミュニケーションを取りたいと考える人にとって「考え方は人それぞれ」は重要な価値観です。
その正体は一体何か?
この記事では「考え方は人それぞれ」という言葉について、哲学、英語への翻訳、例文、類語、関連する名言などを紹介しつつ、独自の視点で考察しています。
「考え方は人それぞれ」という言葉がどうも腑に落ちないと感じている方の手がかりになれば何よりです。
なぜ「考え方は人それぞれ」と人は言うのか?
それは、あなたが何かに対して意見を言ったか、意見を求めたからです。
あるいはSNSやコメント欄などで見かけただけかもしれません。
当然のことですが、あなたのアクションがなければ、「考え方は人それぞれ」という言葉を耳にすることはありません。
つまり、「考え方は人それぞれ」という言葉は、他者とのコミュニケーションで生まれるものなのです。
「考え方は人それぞれ」と言う人の心理を想像してみる
なぜあなたは「考え方は人それぞれ」と言われたのか?
相手が何を考えていたのか、少し想像力を働かせてみましょう。
- 意見が相手と反対だが、対立は避けたい(仲良くしたい)
- 答えがひとつではないため、長時間議論したくない
- そろそろ話題を変えたい
話し相手はこのように考えていると想像できます。
これはあくまでも一例で実際に相手がどう考えているかは分かりません。
しかし、相手の気持ちを想像することがコミュニケーションにおいて重要なのは、説明するまでもないでしょう。
本質的に、「考え方は人それぞれ」という考え方は相手を理解しようとする試みであると筆者は考えます。
共感できないことがあるのは当たり前
一般的に、人が意見を言う時、多くの場合「共感して欲しい」と思うものです。
しかし、相手の言ったことに共感できない場面というのは誰でもありますよね。
共感できないことがあるのは当たり前のことです。
あなたが他者に共感できないことが存在することが、「考え方は人それぞれ」という主張を認める根拠となります。
違いを楽しむことができるか
全く同じ意見の人しかいなかったら、もはや議論する必要がありません。
違う価値観を持った人がいるからこそ、議論をすることができるのです。
「違いを楽しむ」という視点を持つことで、コミュニケーションはスムーズになります。
「考え方は人それぞれ」を哲学的に考察
「考え方は人それぞれでいいのか?」という問いは、哲学的で知的好奇心をくすぐるものです。
少し歴史を遡ってみましょう。
問答法により相手が真理を自覚する
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、問答法によって相手自身に真理を自覚させようとしました。
日本の場合「無知の知」を教科書で習った方も多いのではないでしょうか。
問答法を使うことは、一見すると真理に近づくように見えるかもしれませんが、本質的には、絶対的な真理がないことを証明する手法でもあります。
なぜなら、問答法は相手の矛盾や無知を明らかにする方法でもあるからです。
わかりやすく言うと、問答した相手がそれぞれ別の真理を自覚する可能性があります。
ソクラテスは自らの手法により、絶対的な真理がないことを悟っていたのではないでしょうか。
人それぞれ異なる体験や知識を持っている
「考え方は人それぞれ」という主張は、17世紀の哲学者であるジョン・ロックに近しい考え方だと筆者は考えます。
彼は経験論の立場を取り、「あなたを心配させるものがあなたを支配する」などの格言を残しています。
経験論とはざっくりと言うと、個人の経験や知識に基づいて考え方が形成されるという主張です。
人それぞれ異なる体験や知識を持っているため、考え方は必然的に異なるというわけです。
「考え方は人それぞれ」は思考停止なのか?
ここまで読んで「考え方は人それぞれ」という言葉が、会話を強制的に終了させるように感じる方もいるのではないでしょうか。
考えることを放棄しているように感じる人もいる
「考え方は人それぞれ」は考えることを放棄しているように感じるかもしれません。
たしかに哲学とは、人間や世界の真理・原理を追求する学問です。
「人間とは何か」「生きるとは何か」と考えている人にとっては、相対主義的な考え方や経験論的な立場は受け入れにくいと感じるかもしれません。
しかし、「人はどう生きるべきか」とべき思考で考える人と、そうでない人はそもそも相性があまりよくないのです。
結局「考え方は人それぞれ」の正体は何か?
「他者の意見を尊重し、自分の意見を押し付けないこと」だと筆者は考えます。
「考え方は人それぞれ」という言葉は、他者と円滑なコミュニケーションを取りたいと考える人にとって重要な価値観であり、その人を支える信念です。
もちろん、誰かに危害を加えるような行為はあってはならないことです。
しかし、人が何を考えるかは自由です。
誰にも奪う権利はありません。
「考え方は人それぞれ」の英訳
「考え方は人それぞれ」を機械翻訳すると、Everyone has their own way of thinking.(誰もが自分の考えを持っています)となります。
しかし、People think differently.(人それぞれ異なる考え方をする)の方が日本語としてはニュアンスが近いかもしれません。
なぜなら、それぞれは日本語の辞書によると
対象となる一群のものの一つ一つを問題として取り上げる様子
新明解国語辞典第八版
を意味するため、個々をイメージさせるからです。
「考え方は人それぞれ」の例文
- 人それぞれに考え方が異なる
- 考え方は人それぞれと言える時代は、幸せかもしれない
- 仕事を大事にするのか家族を大事にするのか、考え方は人それぞれである
「考え方は人それぞれ」の類語
四字熟語
- 十人十色
- 三者三様
- 百人百様
- 同床異夢
- 百人百態
「考え方は人それぞれ」に関連する名言
- みんな違って、みんないい。(金子みすゞ『わたしとことりとすずと』)